第1回海中海底工学フォーラム・ZERO



        日  時   2019年4月12日
        場  所   東京大学生産技術研究所
        主  催   海中海底工学フォーラム・ZERO 運営委員会
        共  催   東京大学生産技術研究所(生研研究集会)
        協  賛   日本船舶海洋工学会、海洋調査技術学会、海洋音響学会、(公社)土木学会、(公社)日本水産学会、IEEE/OES東京支部、MTS日本支部
            東京大学海洋アライアンス、東京大学生産技術研究所海中観測実装工学研究センター

        プログラム    01ForumZeroProgram.pdf

研究会

1)挨 拶
東京大学大気海洋研究所 道田 豊
2)Xprize Round2ギリシャ大会報告
・「Team KUROSHIO」ギリシャの果てまでイッテX
  Team KUROSHIO 中谷 武志

[講演概要] Team KUROSHIOは、無人探査ロボットを使って超高速・超広域な海底探査を行う国際コンペティション「Shell Ocean Discovery XPRIZE」に日本から唯一挑戦している産官学の共同チームです。このコンペティションのミッションは、無人で水深4,000mの海底を超高速かつ超広域に探査し、海底地形図を作成すること。これまで我々は、第1関門である技術提案書審査(2017年2月)、第2関門であるRound1技術評価試験(2018年3月)を勝ち抜いてきました。本講演では、2018年12月にギリシャ共和国・カラマタ沖で行われたRound2実海域競技(決勝)についてご報告します。資料
・無人海底地形調査の国際大会 “Shell Ocean Discovery XPRIZE”: GEBCO-NF Alumni チームの軌跡
  GEBCOチーム 住吉 昌直

[講演概要] 米国ニューハンプシャー大学では新時代を切り開く海洋調査技術を積極的に開発しており、その一つの取り組みとして、無人技術を用いた深海域マッピングの国際大会”Shell Ocean Discovery XPRIZE”において、GEBCO-NF Alumni チームとして参加した。本チームは、大洋水深総図(GEBCO)と日本財団(Nippon Foundation)が主催する1年間の水路測量技術を学ぶ研修(通称GEBCO-NF研修)に参加した同窓生の有志が組んだ国際チームで、Autonomous Underwater Vehicle(AUV)とUnmanned Surface Vessel(USV)を用いた無人調査ソリューションで、本大会に挑んだ。本チームは、2017年11月に開催されたRound 1(準決勝: 水深2000 m級)を通過し、昨年11月にファイナリストとして、水深4000 m級のRound 2(決勝戦)に挑んだ。本発表では、本大会に挑んだGEBCO-NF Alumni チームの軌跡について報告する。
平成30年度海洋情報部研究成果発表会 予稿集「次世代の無人海底探査へ向けた挑戦 ~深海域マッピングの国際大会 "Shell Ocean Discovery XPRIZE" ~」
海上保安制度創設70周年記念 海洋情報シンポジウム(平成29年度 海洋情報部研究成果発表会) 予稿集「無人水中探査コンテスト“Shell Ocean Discovery XPRIZE”への挑戦
3)「ちきゅう」による南海トラフ地震発生帯掘削:その到達点
  東京大学大気海洋研究所 山口 飛鳥

[講演概要] IODP(統合国際深海掘削計画/国際深海科学掘削計画)のプログラムとして2007年から南海トラフ熊野沖で掘削が開始されたNanTroSEIZE(南海トラフ地震発生帯掘削計画)は、これまでに「ちきゅう」を用いた12回の航海が行われ、さまざまな技術的挑戦のもと、多くの科学的成果が挙げられてきた。2018年秋から始まったIODP第358次航海では、1944年東南海地震震源域のプレート境界断層を目指して掘削が行われている。本発表では第358次航海の最新の成果もふまえ、これまでの南海トラフ掘削の到達点を概観する。
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4)コーラル・トライアングルの沿岸生態系保全 -2つの超学際的プロジェクトの紹介-
  東京工業大学 灘岡 和夫

[講演概要] コーラル・トライアングルは、世界で最も豊かな沿岸生態系を有するエリアだが、様々な人為的負荷や地球環境変動の影響で生態系の劣化が急速に進行しつつある。本講演ではJST-JICA地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)による5年間プロジェクト「フィリピン国統合的沿岸生態系保全・適応管理(CECAM)」(H27.2終了)に関して、プロジェクト成果が如何に地元の問題解決に向けての合意形成等に寄与したかといった点を含めて紹介する。また、同じくSATREPSプログラムでH29年度から開始した5年間プロジェクト「コーラル・トライアングルにおけるブルーカーボン生態系とその多面的サービスの包括的評価と保全戦略(BlueCARES)」に関しても簡単に紹介し、プロジェクト目標の推進と社会実装におけるネットワーク形成の重要性等についてふれる。資料
5)海中探査機に魅力的なデザインは必要か?
  東京大学生産技術研究所  山中 俊治

[講演概要] 海中工学や宇宙工学などで使われる探査機器や実験施設は、いわゆるコンシューマープロダクトではないので、購入意欲をそそるような魅力は必要ないと考えられている。一方で、そのような分野の研究環境においては、従事者の快適性やユーザビリティなどを洗練させる余裕がないという状況も少なくない。しかし今日、科学技術のオープン化により、研究成果や研究環境が、魅力的なものとして社会に認知されることは、人材、資金、協力企業などを獲得する上で重要な意味を持つようになった。本講演では東京大学生産技術研究所の「価値創造デザイン推進基盤」で制作された様々な「先端技術のビジョンを具現化するプロトタイプ」を紹介しながら、海中工学のデザインについて考える。資料
6)特別セッション : AIの実用ビジネスへの応用と課題
  司会 東京大学生産技術研究所 巻 俊宏
・その1 機械学習に基づく画像超解像による効率的な海底地形図の詳細化
  京都大学 薗頭 元春

[講演概要] 本研究では詳細な海底地形図を効率的に作成するための技術を確立することを目指す。既存の粗い水深観測結果から細かい地形を推定し、また推定が不確かな場合は観測を提案できれば、新たな観測が必要な海域を絞ることで効率的な詳細化を実現できる。そこでグリッド化した地形データは画像であるという点に着目し、低解像画像から高解像画像を復元する技術である超解像を応用する。特に海底地形ならではの特徴を捉えるため、今まで蓄積されてきたデータを参考にできる機械学習の技法を使う。具体的にはGEBCO 30秒角画像とその8倍解像度の画像の組を多数用意して、超解像用の敵対的生成ネットワークで学習した。また超解像結果の誤差や見た目を実験的に評価した。資料
・その2  AIを活用した水中画像処理技術と深海資源調査への展開
  九州工業大学 陸 慧敏

[講演概要] 現在、様々な海底資源の採掘方法があるが、鉱物資源を海底から自動的に採取することが困難である。この原因の一つは海底から母船までの観測データのリアルタイム転送が困難なためである。また、現存のカメラによる水中観測法は海底の複雑な環境に影響されやすく、採掘時の粉塵により計測できなくなる場合がある。一方、供給サイクルの長期化、特に若い世代における海底機器開発と操作経験が豊富な技術者不足といった問題も生じており、海底資源産業開発の大きな課題の一つとなっている。そこで、深海採鉱機作業時に効率的な自律ロボティクス理論の確立が期待されている。他方、近年はビッグデータ・人工知能への注目が高まり、各国がその開発に向けて力を入れている。しかし、これまでのビッグデータ・人工知能の研究開発は空中、陸上等の日常生活支援に関する課題の解決が主である。深海底や海中などの海洋調査に対する先端的なビッグデータや人工知能の研究開発とその応用はまだ不十分であり、従来の人工知能やロボット技術をそのまま適用することが困難な場合が多い。そこで、本講演では先端的な人工知能を用いた水中画像復元、水中物体追跡や水中バーチャルリアリティー環境構築等の技術を紹介する。資料
・その3 強化学習を用いた自律型海中ロボット制御の可能性
  東京大学新領域大学院 野口 侑要

[講演概要] 近年、強化学習という機械学習の一種が注目されている。強化学習は、経験をもとに試行錯誤しながら行動を最適化する理論的な枠組みである。これをロボットの制御にうまく応用することで、ロボットが未知の環境においても自動的に最適な動き方を学習し、期待した役割を果たすようになると期待されている。講演者は自律型海中ロボットの研究を行っているが、海中は人間の監視が行き届かないためロボットにとって危険な環境であり、強化学習の応用が強く望まれる。本講演では、強化学習の基本的な考え方や最新の研究例を紹介しつつ、これまで講演者が取り組んできた、自律型海中ロボットへの強化学習の応用に関する研究について発表する。資料
・その4 AIによる水産・養殖の最適化に向けて-総合的な水圏環境モニタリング手法の開発
  理化学研究所 寺山 慧

[講演概要] 近年深層学習をはじめとする様々なAIの技術が脚光を浴びている。 これらの技術は、水産・養殖の現場でも非常に役立つ可能性があるものの、 実用的な応用・ビジネス展開まで見据えた技術開発は未だに発展途上である。 本講演では、 最近の水産・養殖業へのAIの導入に関する動向を整理しつつ、これまで講演者が取り組んできた、 ソナーや動画データからの魚の行動解析手法やサンゴの被度推定手法など具体的な技術開発について紹介する。また、近年理化学研究所が内外の機関と共同して取り組んでいる、 養殖場や漁場に対する総合的な環境モニタリング手法開発についても紹介する。資料
・その5 AIを用いた台風発生の予兆検出とAIコンペティション開催による予測精度の限界への挑戦
  海洋研究開発機構 松岡 大祐

[講演概要] 台風等の気象災害が人間の社会生活に与える影響は大きく、それらの発生を事前に予測することは、安心・安全して暮らせる社会づくりにおいて重要な課題である。我々は、高解像度の気象シミュレーションデータおよび気象衛星観測データを活用し、AIによる台風発生の予兆となる雲の検出を目指した研究開発を行っている。本講演では、特に画像認識に特化した深層学習手法である畳み込みニューラルネットワークを用いた台風の予兆検出について報告する。さらに、研究において使用したデータの一部を限定公開し、予測精度を限界まで高めるためのコンペティション形式のイベントを開催した。数百名のAIエンジニアが参加し、SNSでも話題となったAIコンペティションの概要および結果についても紹介する。資料