第5回海中海底工学フォーラム・ZERO Online



        
        日 時   2021年4月23日
        場 所   東京大学生産技術研究所An棟2Fコンベンションホール「ハリコット」 【Web開催】
        主 催   海中海底工学フォーラム・ZERO 運営委員会
        支 援   東京大学生産技術研究所(生研研究集会)
        協 賛   日本船舶海洋工学会、海洋調査技術学会、海洋音響学会、(公社)土木学会、(公社)日本水産学会、IEEE/OES東京支部、MTS日本支部
              東京大学海洋アライアンス、東京大学生産技術研究所海中観測実装工学研究センター

        プログラム 05ForumZeroProgram.pdf


研究会:13:00-17:00

1)挨 拶  13時00分-13時05分
  東京大学大気海洋研究所 道田 豊

  
2)地味だが深い巣穴の話:底生生物と海洋環境  13時05分-13時35分
  産総研地質調査総合センター  清家 弘治

[講演概要] 浅い海から深海まで、海底には多くの生物が生息しています。海底の堆積物に潜ったり海底面の上に生息している生物のことを底生生物といいます。貝やエビ、ゴカイなどが該当します。私は、底生生物の住処である巣穴や、その糞、あるいは這い痕(はいあと)を調べることで、底生生物がどのように生きているのか、そして周辺の海洋環境にどのような影響を与えているかを調べてきました。巣穴の研究と聞くとかなりマニアックな研究領域と思う方もいるかもしれません。しかし、巣穴の歴史=生命の歴史と言っても良いくらい、巣穴に関する知見は重要です。地質時代として、古生代、中生代、新生代があり、これら3つをまとめて顕生代と言います。恐竜が生きていたのは中生代、マンモスや我々人類が登場したのは新生代です。では、顕生代の始まりはどのように定義されているかというと、初めて地球上に巣穴が出現した時をもって、顕生代の始まりが定義されているのです。巣穴は海底にぽっかりと開いた地味な穴ですが、その深さは海底から数メートルに達することも珍しくなく、海底環境に大きな影響を及ぼします。本講演では,浅海の巣穴研究の話を中心としつつ、深海の巣穴や地層の生痕化石に関するトピックなどについても触れながら、私のこれまでの研究を紹介していきます。
プレスリリース1 / プレスリリース2 / インタビュー記事 / 関連論文1 / 関連論文2 / 関連論文3
3)太平洋側北極海の昇温と結氷遅延メカニズム〜  13時35分-13時55分
  東京大学大学院新領域海洋技術環境学専攻  小平 翼

[講演概要] 北極域は地球上で最も急激に温暖化が進行する地域であるが、その詳細なメカニズムは依然未解明のままである。北極域で温暖化が増幅される主な原因として雪氷アルベドフィードバックが挙げられるが、低緯度からの大気・海洋を通じた熱流入の重要性も指摘されている。海洋を通じた熱輸送については、太平洋からと大西洋からの2つの経路が存在し、太平洋水は総流量、総熱量ともに大西洋水に比べて小さいが、北極海のより表層付近に流入するため、付随する熱による海氷の融解が懸念されている。ここでは2018年11月の高温な太平洋側北極海と海氷の結氷遅延に着目し、北極海観測航海の様子を交えながら、太平洋側北極海における結氷遅延メカニズムについて述べる。
プレスリリース1 / プレスリリース2 / 関連論文1 / 関連論文2
4)機械学習による海底画像の自動分類  13時55分-14時30分
  University of Southampton  山田 隆基

[講演概要] AUV技術により、海底調査において大量の可視画像を収集することが可能です。機械学習はこれらの分析作業を効率化するために有望な技術ですが、あらゆる海底調査に適用できる正解データを準備することは事実上不可能であるため、正解データは調査ごとに専門家が手動で作成することが必要となり、大変な労力を要します。本講演では、AUVによる海底調査特有の問題を考慮し、この正解データ作成の負荷を軽減するための取り組みを紹介します。また、国内外の多くの研究機関が利用している、海底画像と正解データの共有のためのウェブプラットフォームと、研究への活用事例についてもご紹介します。
概要 / 参考論文1 / 参考論文2 /
5)民間企業によるAUVの開発と運用 -為せば成る、為さねば成らぬ何事も-
        Tuna-Sand級ホバリング型AUV「YOUZAN」誕生  14時30分-14時55分

  いであ(株)  高島 創太郎

[講演概要] 海洋調査における水中ロボットが果たす役割は、近年ますます大きくなっている。近年では国内においても自律航行型のAUV(Autonomous Underwater Vehicle)が大学や研究機関により開発され、AUVによる新しい発見や、従来は困難だった調査も実施可能となった。「次世代海洋資源調査技術(海のジパング計画)」において、東京大学生産技術研究所、九州工業大学社会ロボット具現化センター及び海上技術安全研究所が開発したAUVの運用技術を学び、海洋調査におけるホバリング型AUVの有効性を実感した。様々な海洋問題が顕在化する現代において、持続可能な社会経済発展と環境の両立にロボットの活躍が必須であると判断し、Tuna-Sand級ホバリング型AUVの民間が使用する商用化1号機として導入した。「YOUZAN」は、2020年度の運用開始当初から、様々な海域の調査ミッションをこなしており、本発表では、開発と調査、そして民間会社によるAUV調査の課題と将来展望についてお話します。
関連URL

- 休 憩 -

6)特別セッション IoTを使った海洋観測  15時15分-17時00分
・イントロ 趣旨説明  15時15分-15時20分
  東京大学大気海洋研究所  道田 豊

[趣旨] 持続可能な開発目標の達成、うち特にSDG-14(海の豊かさを守ろう)の達成を主たる目標とする「国連海洋科学の10年」が開始され、今後10年間,国際的に集中して海洋科学に取り組む時代を迎えており、海洋工学の今後の10年を見通すとき、海洋データ連携は重要なキーワードのひとつである。これまで技術的に大きな障害であった海上あるいは海中での情報通信が飛躍的に進展してきており、海洋観測技術の高度化とあいまって、従来は想定できなかった新たな連携が可能となりつつある。ここでは、全体を俯瞰するとともに、成層圏通信と海中通信について取り上げて、今後の発展の方向を探る。
・その1 地海洋分野における最新の情報通信技術の利活用への期待  15時20分-16時00分
  東京大学大学院工学系研究科  中尾 彰宏

[講演概要] 「国連海洋科学の10年」がスタートし、海洋に関する専門知と最新のICTを活用する学際的な課題解決型の研究の推進に大きな期待が寄せられている。情報通信分野においては第五世代移動通信(5G)が商用化され、さらに次世代のBeyond5G/6Gに向けた研究開発が10年後の実用化を目指して始動している。本講演では、5Gやローカル5Gという最新の情報通信技術を海洋における遠隔監視や遠隔制御に活用することで1次産業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速し、地域創生に繋げる取り組みを紹介し、更に、まさにBlue Ocean(未開拓分野)とされている海洋における様々な通信技術への期待と今後の学際的なアプローチでの海洋分野の進展を議論する。
関連URL1 / 関連URL2 / 関連URL3
・その2 成層圏プラットフォームHAPSが実現する5G/6Gの広域展開  16時00分-16時20分
  ソフトバンク  町田 彰則

[講演概要] 海洋、山岳を含めた非都市部への高度な通信環境整備の実現に向けNTN(Non-Terrestrial Networks)の発展が期待されています。そのためにHAPSと呼ばれるソーラー無人航空機で実現する成層圏プラットフォームは欠くことのできない役割を果たします。HAPSが持つクリーンエネルギー、展開のし易さ、低遅延通信の実現といった衛星にはない特徴と可能性についてご紹介します。
関連URL
・その3 水中音響通信の高速化 600kbps×kmを突破 〜深海探査機用音響通信装置の開発〜  16時20分-16時40分
  海洋研究開発機構  志村 拓也

[講演概要] 水中の音響通信では、空中の電波通信と比べて、マルチパス波による干渉やドップラーシフトの影響が桁違いに大きく(非常に厳しい二重選択性)、利用可能な周波数帯域幅は桁違いに狭い。著者らは、このような問題を克服し、音響通信の速度を高速化するための研究を行っているが、そのスピンオフ成果として、深海探査機用の音響通信装置を開発した。その性能確認試験では、通信速度×距離の指標で、600kbps×kmを突破した(深度6,000mと9,000mからそれぞれ98.9kbps、69.2kbpsを達成)。本装置は、潜水調査船しんかい6500に搭載され、カメラの画像を転送する装置としてすでに実運用されている。また、ウッズホール海洋研究所の潜水船アルビンにも試験的に搭載し伝送実験に成功した。
関連URL / 参考論文1 / 参考論文2 / 参考論文3 / 参考論文4 / 参考論文5 /
・ディスカッション  16時40分-17時00分