第3回海中海底工学フォーラム・ZERO


        
        日 時   2020年4月24日
        場 所   東京大学生産技術研究所 An棟2Fコンベンションホール「ハリコット」 【Web開催】
        主 催   海中海底工学フォーラム・ZERO 運営委員会
        共 催   東京大学生産技術研究所(生研研究集会)
        協 賛   日本船舶海洋工学会、海洋調査技術学会、海洋音響学会、(公社)土木学会、(公社)日本水産学会、IEEE/OES東京支部、MTS日本支部
              東京大学海洋アライアンス、東京大学生産技術研究所海中観測実装工学研究センター

        プログラム 03ForumZeroProgram.pdf


研究会:13:00-17:30

1)挨 拶  13時00分-13時05分
  東京大学大気海洋研究所 道田 豊

  
2)海を越えた最初の日本列島人 ~実験航海で探る3万年前の挑戦~  13時05分-13時45分
  国立科学博物館・「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」代表 海部 陽介

[講演概要] ホモ・サピエンスはアフリカで進化し、5万年前頃から急速に世界中へ拡がって、人類の分布域をそれまでの倍以上に広げた。それを可能にした要因の1つが「本格的な海洋進出のはじまり」だったが、近年の研究で、日本列島にもその興味深い痕跡があることがわかってきた。ホモ・サピエンスが日本列島へ到来したのは3万8000年前頃の後期旧石器時代であるが、かつての定説と異なり、この時、彼らは海を渡ってきたことが明らかにされている。国立科学博物館では、当時の海への挑戦にはどのような困難があり、祖先たちはそれをいかにして乗り越えたかを探るため、「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」(2016-2019)を実施した。本講演では、数種の古代舟を製作して海上テストを繰り返し、最後に丸木舟を漕いで台湾から与那国島へ渡った、この実験プロジェクトの模様を紹介する。関連リンク
3)海洋科学とヨットレースとのコラボレーション - Sailing towards a plastic-free ocean  13時45分-14時05分
  海洋研究開発機構 千葉 早苗

[講演概要] 小型で取り扱いの容易な観測機器やセンサーの開発が進むにつれ、海洋環境変化やその生態系への影響を地球規模でモニタリングするために、タンカーやヨットなど民間のボランティア船を用いた観測が注目を集めている。JAMSTECは2019−2020年の年末年始にかけて、日本とパラオの友好25周年を記念して開催したヨットレースにおいて、レース参加艇およびサポート艇の帆船に連続サンプラーを搭載して、マイクロプラスチック分布の調査、ならびに帆船に同乗したパラオ児童向けに海洋リテラシープログラムを実施した。講演では、プロジェクトの概要を報告するとともに、海洋科学と社会の繋がりを強化する手法として、民間船による観測と海洋リテラシーのカップリングの有効性を検証する。関連リンク
4)新造大型測量船「平洋」が就航  14時05分-14時35分
  海上保安庁海洋情報部 木下 裕巳

[講演概要] 令和2年1月、海上保安庁の測量船「平洋」が就航しました。平成10年に就役した測量船「昭洋」以来、20年ぶりの大型測量船となります。総トン数4,000トン、主要装備としてAUVを2基装備し、ASVにより遠隔制御可能な広域中深海調査船で、水深100~10,000mの我が国EEZ内のあらゆる海域での調査が可能な測量船となっています。本発表では、海洋調査に特化した本船の建造までの経緯、特徴及び最新の調査機器について紹介するとともに、本船を就役させることとなった「海上保安体制強化に関する方針(平成28年関係閣僚会議決定)」に基づく我が国のEEZ内の調査体制強化の取り組み概要について紹介します。【広報資料】海上保安庁最大となる測量船「平洋」がいよいよ就役! / 【広報資料】測量船「平洋」一般公開について / 関連リンク
5)海底では時間はゆっくり進む? 光格子時計とその測地応用の展望  14時35分-14時55分
  東京大学理学部 田中 愛幸

[講演概要] 現代社会において時刻をグローバルに同期することは実用的に重要である。この基礎となるのは原子時計に基づいて定められる1秒の長さである。近年、光の波長を用いて多数の原子を同時に観測する光格子時計の開発により、1秒の長さをこれまでの国際標準を100倍以上上回る精度で決めることが可能となった(300億年に1秒の誤差に相当)。相対性理論によれば、時計を設置した地点の標高が1 cm低くなると時計の進みは10の-18乗だけ相対的に遅くなるが、光格子時計はこのわずかな変化を捉えられる。この性質を利用するとプレート沈み込みによる地殻の上下変動を時計で検出できる。陸上や海底に光格子時計を設置し、既存の測地観測手法と組み合わせることで、巨大地震発生域における歪の蓄積過程をより詳細に解明することが期待される。資料

- 休 憩 -

6)事前に捕獲対象を設定しない生物捕獲用自律型海中ロボットに関する研究  15時20分-15時40分
  九州工業大学 西田 祐也

[講演概要] 海洋生物資源の調査にAUVの利用が期待されているが、既存のAUVは広域に渡って生息域をマッピングできるものの、資源調査に重要な実サンプルの採取に至っていない。世界中で研究されている最新のAUVでさえ、あらかじめ設定した対象しかサンプリングできないため、海底を探索して発見した物体のサンプリングが必須である調査にAUVは活用できていない。効率的かつ効果的な海洋生物資源調査の実現を目指し、本研究では投入前に捕獲対象を指定せず、観測中に発見した生物をサンプリングできるAUV Tuna-Sand2を開発した。本発表では、ROVのように研究者が海底画像を確認しながら捕獲対象を指定し、その生物をサンプリングできるAUV Tuna-Sand2のシステム構成および調査手法について紹介する。参考論文 / 関連論文 / 西田研究室紹介 / 2018年4月生研記者会見「自律型海中ロボット「Tuna-Sand2」全自動生物サンプリングに成功」リンク
7)海底調査の強力な味方 “Speedy Sea Scanner”  15時40分-15時55分
  ウインディネットワーク 阪本 真吾

[講演概要] 弊社では、東京大学大学院新領域創成科学研究科との共同研究により、曳航式の海底写真マッピングツールSpeedy Sea Scanner(SSS)を新たに開発しました。SSS は、複数の画像から3次元地形モデルと高品質のオルソモザイク画像(解像度:1.5-3.5 mm程度)を作成することができる、SfM(Structure from motion:多視点ステレオ写真測量)技術を応用した、新しいコンセプトの海底マッピングシステムです。低コストで運用でき、高い調査効率(~10,000m2/hour)を実現したこのシステムは、サンゴ礁や藻場などの海底生物相の調査や、水中構造物の計測現場等において強力な調査ツールとなると期待しています。本講演では、SSS の概要と海域での適用例をご紹介します。資料 / 関連論文
8)フィールドロボットの社会実装をめざして-福島ロボットテストフィールド  15時55分-16時10分
  福島ロボットテストフィールド 細田 慶信

[講演概要] 東日本大震災及び原子力災害によって失われた福島県浜通り地域等の産業回復するために、新たな産業基盤の構築を目指す「福島イノベーション・コースト構想」が国家プロジェクトとして立ち上がっています。この構想の核として、陸海空フィールドロボットの社会実装を目指した研究開発拠点である福島ロボットテストフィールド(RTF)が整備されています。RTFは室内水槽をはじめとする21の実験施設を有し、平成30年7月から順次開所し、令和2年春に全面開所しました。RTFの実験施設及びRTFを活用した研究事例等を紹介します。資料
9)特別セッション 肌で感じた海外の動向  16時15分-17時30分
  司会 東京大学生産技術研究所 巻 俊宏

・イントロ  16時15分-16時25分
[趣旨] 欧米の海中工学の最新動向について知りたいという要望が多く寄せられている。そこで、海外の研究所に滞在した経験のある若手研究者が集い、各自の関わってきた研究課題の動向および研究環境、さらには教育のあり方や生活スタイルについて率直な意見交換を行い、今後の日本の海研究のあり方を問う。
・その1 海洋音響技術を介して仏英の研究動向を探る  16時25分-16時35分
  東大新領域 水野 勝紀

[講演概要] 情報が極めて得難い海底下の環境は、その重要性に反して知見が少ない。しかしながら、その情報を取得するための効率的な手段は未だ確立されておらず、新しい計測技術の開発が期待されている。そのような背景の中、東京大学が若手研究者向けに展開している国際展開事業を利用し、2018年8月から1年間、フランス国立科学研究センター(CNRS)やサウサンプトン大学国立海洋センター(NOCS)と、「海底下環境計測技術の開発・応用」に関する国際共同研究を実施する機会を得た。共同研究の内容やきっかけ、モチベーションに加え、仏英の研究動向などについて感じたことを紹介し、今後の日本の海洋研究の在り方について考えたい。関連論文
・その2 デルフト工科大学長期派遣報告  16時35分-16時45分
  筑波大学 海老原 格

[講演概要] 平成25年9月初旬から12月下旬までの約4ヶ月に亘り、オランダのデルフト工科大学(Technische Universiteit Delft; TU Delft)に滞在する機会を得た。小職の研究対象である水中音響通信は複数の国際プロジェクトが現在進行しているが、デルフト工科大学はその一つに参画している。そのような場に身を置き、様々な研究者の方達と積極的に情報交換・討論を行うことで、自らの研究の幅を広げることが出来た。また、異文化に身を置くことで欧州の文化や価値観の違いを肌で感じると共に、改めて母国を見つめ直す機会を得ることもできた。当日は、かつて、日本に西洋文化を伝えてくれたこの国が教えてくれた、現代の欧州の文化や研究活動のあり方について、僭越ながら紹介させていただく。資料
・その3 業界を牽引するラボの研究スタイル:ブレーメン大学滞在とドイツ船航海経験から  16時45分-16時55分
  東京大学大気海洋研究所 高木 悠花

[講演概要] 私は浮遊性有孔虫という動物プランクトンの生態を中心に研究をしている。海外での研究経験は短期間ではあるものの、2016年にはドイツのブレーメン大学に属する海洋環境科学センター(MARUM) のラボにポスドクとして滞在し、またその後も2017年に、同ラボのPIが主席を務める研究航海に1ヶ月間乗船した。日々の研究スタイルや研究課題についての考え方など、自分のこれまで経験してきたものとは異なる点を多く目の当たりにしたほか、特に1ヶ月にわたる研究航海では、船上で、リアルタイムでデータを出し解析していくスタイルを経験し、非常に刺激的な毎日を過ごした。本講演では、ドイツ流の研究現場での雑感や、特に航海における研究スタイルの違いについて話題提供したいと考えている。関連リンク
・その4 米国水路測量研究の拠点で体感した先進的な測深技術の開発動向  16時55分-17時05分
  海上保安庁海洋情報部 住吉 昌直

[講演概要] 講演者は、2016年から1年間、米国ニューハンプシャー大学へ留学し、水路測量技術者養成コースである"The Nippon Foundation / GEBCO Postgraduate Certificate in Ocean Bathymetry"を修了した。本コースは、大学院修士相当の「座学」から調査船による本格的な「水路測量実習」までが網羅されたコースで、講師陣は水路測量分野における世界有数の研究者である。本研修生及び同窓生は、海底地形調査における研究・技術開発に対して、非常に意欲的かつ情熱的で、無人海底地形調査の国際大会Shell Ocean Discovery XPRIZE 参加するため、GEBCO-Nippon Foundation Alumniチームを有志で結成し、海外メーカーの協力を得ながら挑戦してきた。本講演では、留学・XPRIZEにおける経験を通じて実感した先進的な測深技術開発の動向・アプローチについて報告する。Nippon Foundation / GEBCO Training Program (GEBCO Web Page) / Nippon Foundation / GEBCO Training Program (UNH Web Page) / Center for Coastal and Ocean Mapping (CCOM) - Joint Hydrographic Center (JHC), University of New Hampshire (UNH) / (4) GEBCO-Nippon Foundation Alumni Team (Shell Ocean Discovery XPRIZE)
・参加者とのディスカッション  17時05分-17時30分