マイクロ波リモートセンシングによる海面観測システム

電磁波リモートセンシングは、可視光線、赤外線、マイクロ波など電磁波の反射、放射及び散乱の特性が対象物体の状態によって異なる性質を利用し、人工衛星や飛行機など遠く離れたところから対象物体の種類、物性、温度、形、表面粗度、移動速度などを計測することである。
土地の利用形体、植生の分布、海面温度分布、雲の分布、海氷分布など時・空間的変動が比較的遅い物質量の観測には、空間解像度が優れた可視域や赤外域、またマイクロ波放射計センサから得られた、画像データ解析を用いたリモートセンシングが適し、多くの観測結果が定期的に公表され、我々の日常生活の重要な情報源となっている。しかし、時・空間的に変動が激しい海上風、海洋波浪、海表面流れなどの観測においては、可視域、赤外域、マイクロ波放射計センサから得られる画像データは極一部の限られたところのみ有効である。
マイクロ波高度計、マイクロ波散乱計、合成開口レーダ(SAR)などの能動型マイクロ波センサは、波長の長いマイクロ波を用いるため、空間解像度は可視域・赤外域に比べて劣るが、センサ自らが放射するマイクロ波が対象物体で散乱し、戻ってくるマイクロ波の強さを計測することで、対象物体によるマイクロ波の散乱過程を定量的に評価することが可能である。マイクロ波の散乱過程に要する時間はほんのわずかで、激しい変動する海面状態の計測に適したセンサである。

MicroSensing

本研究室では、変動する海面におけるマイクロ波の散乱特性を実験と理論の両面から解析し、マイクロ波リモートセンシングにより海面の物理特性を計測する手法の開発を行っている。マイクロ波リモートセンシングにより計測できる海面の物理現象は、海洋波浪、潮位・津波などの水面変位、海上風、海表面流れ、海氷などである。
研究では、マイクロ波送受信機(レーダ)の制御、レーダ信号の収集と解析による海面情報の抽出、得られた海面情報の表示・発信を行う、海面観測システムの開発をも行っており、神奈川県平塚沖、岩手県釜石市沖、岩手県久慈市沖、北海道紋別沖において、波浪及び津波観測システム、流氷観測システムの実海域実験を行っている。